錫杖岳 前衛フェース 3ルンゼ~グラスホッパー本流 継続登攀
初めての錫杖。
春の息吹を感じられるほど好天気で、数日前の降雨の影響でデブリも多かった。
雪も腐っててツボ足で大変だった。
徐々に幕営地であるクリヤの岩小屋が近づく頃、錫杖岳が現われる。
噂通り、本当に壁、壁、壁だった。
錫杖岳はアルパインクライマーにとっては憧れのエリアである。
「la campanella」、「しあわせ未満」や「銀河鉄道」のフリー化、「見張り塔からずっと」、「注文の多い料理」店など、数々のドラマを産み出している。
そして、錫杖岳の登竜門的なルートが「前衛フェース 3ルンゼ」である。
今後のクライミングライフを堪能する一歩としてその「前衛フェース 3ルンゼ」を経験したいと思い、佐藤さんにガイドをお願いしてきた。
佐藤ガイドならどういうラインで登るのか。そこに興味があった。
この記事を書いている頃にはもう既に下界に降りていて結果的なことを書くことになるが、そこにバイルを置いて登攀できるの?というような場面が2か所あった。
チョックストーンの左にあるベルクラとか、グラスホッパー本流の2ピッチ目が微妙に切れているつららを壊さずにバイルを引っ掛けて登るとか。
ほぼ氷をできるだけ落とさずに、自然が創られたものを自然のままに、できるだけなめらかに、美しいラインを登攀する佐藤ガイド。
そんなクライミングを終始見ていたうちは、そのラインと同様に登らないと後がないのではと思い、壮大なプレッシャーがかかる。
日時
- 3/21
- 07:00 自宅 出発
- 09:30 佐藤ガイド 合流
- 12:05 槍見館付近の駐車場 到着
- 12:36 槍見館付近の駐車場 出発
- 15:27 クリヤの岩小屋 到着
- 3/22
- 03:00 起床
- 04:10 クリヤの岩小屋 出発
- 05:17 3ルンゼ取り付き
- 07:05 3ルンゼ登攀終了
- 07:31 グラスホッパー本流取り付き
- 09:40 グラスホッパー本流登攀終了、3ルンゼの裏側へ懸垂下降(5回)
- 12:00 クリヤの岩小屋 到着・撤収
- 12:30 クリヤの岩小屋 出発
- 13:43 槍見館付近の駐車場 到着・支度
- 14:07 槍見館付近の駐車場 出発
夕飯メニュー
- キムチ+納豆
- 鍋
- 固定物(鳥だし)、白菜、人参、えのき茸、ネギ、椎茸、豚肉
- 肉
- ロールキャベツ
- 鍋の残りをラーメンで締め
- 干し柿、美味すぎ。甲府市は干し柿が普通のように作られているらしい。
タイムライン
日本登山大系から。7巻の槍・穂高岳に載っている。
残念ながらその本はプレミアついてて入手しづらいけれど、ヤフオクとか古本屋で根気よく探せば見つかる。
今回は3ルンゼの方。この図がまさに次の写真と同じイメージ。
これが、噂の錫杖岳 烏帽子岩前衛フェース。
今回の装備。75Lのザックほぼいっぱい。大体20Kgかな。
槍見館付近の駐車場で車停めてアプローチ。
最初はこのような山道を歩く。ツボ足大変でした。
途中でそのような岩場もある。登ったら崩れそう。
アプローチの中でも大変だった渡渉。
数日前に気温が上がって降雨もあった影響でデブリが新しい。結構そこまで迫っていた。
その辺りまで来ると正面に錫杖岳前衛壁が立ち上がる。その前に規則正しく並んでいる木々がマッチしていてお気に入りの一枚。
クリヤの岩小屋。
うちを含めて5テントはあったかな。
幕営し、まずは近くの雪を集めて水つくり。
クリヤの岩小屋付近の谷にある水をとっていこうと思ったけれど、深くてダメだった。普段はそこから水をとるらしい。
水を作るとき、雪だけじゃ全然解けないので、少々水を加えておく。
こんな感じで溶かして、4L入るプラティパスに移す。
その合間に、佐藤ガイドが作った納豆キムチ。
お手軽で結構うまいのでオススメ。
「今夜は鍋にしましょう」
こんな感じ。
その合間、友人のOさんがやってきて何と高級食材をもってきた。
やば、肉ですよ。
肉肉肉。とろけました。
予定通り、3時に起床。快眠。
「いい天気だよ」と佐藤さん。
窓から覗くと確かに星が無数に広がっていて、快適なクライミングできそう。
朝食の支度。鍋の残り物に昨夜水につけておいたアルファ米を入れておじや風に。起きたばかりの胃ににやさしいごはん。
4時過ぎには出発。外は、もちろん真っ暗。
幕営で固めたときの感触と違って結構雪が締まっていて歩きやすそう。廻りを見渡すと、うちのテントだけ明かりが。
3ルンゼの直下でハーネスやギアの準備。スタカットで登攀。
3ルンゼ入口から後ろを振り返ると結構な急傾斜。
3ピッチ目、次のラインを見極める佐藤ガイド。彼の眼差しを少しは理解できるクライマーになりたい。
ルンゼのむこうは晴れていて焼岳の雄姿が見える。
上を見渡すとこんな感じ。写真だとちょっと垂直っぽく見えますが、Ⅲ~Ⅳくらい。
その日の天気もあたたかくて、水が流れてる。
ほぼ、グローブでホールド掴んで登攀、時々草付きにバイルを差し込むって感じ。
ここが3ルンゼの核心?チョックストーン。
ここはチョックストーン左で抜ける。
チョックストーンを超えると雪が詰まった緩めの傾斜壁。ほぼ歩きで3ルンゼの終了点へ。終了点からグラスホッパーが見える。
終了点で小休止。グラスホッパーは下部が解けていてミックス状態。そのため、グラスホッパー本流を登ることに。荷物をデポし、最低限のギアのみもっていく。
この手袋、気になる。ゴム手袋で保温材(?)が入ってる。アイスクライミングにぴったり。
終了点を後ろに振り返った時の風景。キノコ雪だよね、あれ。
グラスホッパー本流の氷結具合はこちらです。
ここからスクリューをふんだんに使ってクライム。 絶妙なラインを取られる佐藤ガイド。そのライン通りに登っていくことは、今までにないスリリングな体験。
グラスホッパー本流をトップアウトし、グラスホッパー終了点へ移動、この真下を懸垂下降し3ルンゼ取付きへ。
グラスホッパーの真下を懸垂下降。
今までにないムーヴでアイスするので、スクリュー回収も一苦労でしたが、楽しかった!
佐藤さんの嫁さん、娘さんお手製のバルーンアート。おもてなしありがとうございました!
所感
世界トップレベルのクライマーにガイドを受けるということはクライミングだけではなく、出発から帰り、初めから終わりまで参考になることが詰まっている。
今回も幕営、食事、歩行、地理の見方、そしてクライミングについて大変勉強をさせていただいた。
クライミングをしていくのか真剣に見つめて追いつこうという一心から逆に「慌てている雰囲気が伝わる」と指摘を頂いた。
急ぐことと慌てることは違う。
クライミング、下降時慌てすぎ。
スピードも大事だが、やるべきとこはしっかりとこなして進むべき。
アルパインや山は色々とプレッシャーを受ける要素がある。
その時、冷静に慌てることなくいられることはアルパインクライミングをする上でとっても重要だと思う。
確かに無用な動作がいくつかあった。
「冷静かつ慎重にクライミングする」というのはやっぱり多くの場数を踏む必要があるなあと。
これで私の初めてのアイスクライミングシーズンが終わる。
佐藤さん、ありがとうございました。