後ろむいても何もないよ

攀じる意味を追求する日々

「登山研修VOL.29」を読んでみた

登山研修 VOL29

国立登山研究所が編集、発行している「登山研修」という資料をネットで見つけた。

最新版は「vol.29」で、毎年1回発行している。

登山技術の最先端的な情報が文字によってまとめられてるため、すごく参考になる。

バックナンバーも全てPDFで閲覧できるようになっている。

vol.29を読んで感じたことを書いてみる。

「同人青鬼の活動について」

最新版を読んでみると、私が憧れている山岳同人グループの一つである「同人青鬼」のメンバーであるチッペさんが書いたもの。

今後のクライミングライフに大いに刺激を受けた。

自分が山を始めたきっかけが似たような感じだったからかもしれない。

翌朝テントの外は一夜にして一面の雪景色、正に別世界に変わってしまっていたのだった。 この時の燃え上がるような紅葉の赤と降りしきる真っ白なぼたん雪のコントラストは間違いなく22年人生で未だかつて見たことのない光景だった。それが私にとっての原風景と言えるが、果たしてこれがきっかけで山をやりたいと思う様になったのか、それは今でも疑問である。この日を境に、私が山の稜線を見て狂おしい気持ちいなる人種に変わってしまったことは確かだが、もっとずっと遠い昔から、私の中には山を愛する心があった様に思うのだ。その後山というものが私の人生の中心となってしまった結末を見るにつけ、この出会いはまさに運命だったとしか言いようが無いからだ。

同人青鬼の活動(Twiiterやウェブサイト)を随時見ているけれど、確実にレベルアップしているし、本シーズンにアイスゲレンデを開拓した模様。

そんなグループが最初は2人だけで現在は30数人くらい膨れ上がっている。

同人青鬼には実に様々な"山好き"が所属している。年齢は20歳~30歳代が最も多く、比較的若い社会人山岳集団と言えるだろう。夏は沢登りを楽しむ者が多く、内容も登攀メインだったり吊メインだったりと様々だ。冬は冬期登攀が多いが、縦走やスキーを楽しむ者も居る。海外遠征経験者も少ないながら存在しており皆の刺激になっている。つまりスタイルは多様だが、大半のものが山を自由に楽しみたいと考えており、曽於為にアルパインクライミングの技術を向上したいと考えている。もちろんその師たちとしてのスポーツクライミングも活発に行われており、平日は大抵クライミングジムでのトレーニング、春や秋には岩場に集まって宴会をしながら指の皮がなくなるまで登り尽くす。その心の中ではみな青々として鬼の炎を燃やしており、もっともっと登りたい、もっともっと強くなりたいと激しく飢えているのである。

このように、いつも30数人が集っているわけではなくて、同じ目標を持った者同士で組んで登りに行っているようだ。

「高所アルパインクライミングにおける食料、水分補給の計画の仕方」

アルパインクライマーでクライミングインストラクターである長門敬明氏の記事。

以前、ジムの講習でお世話になっていて、軽やかで綺麗なクライミングをするお方だと感じた。

個人的に高所アルパインクライミングに興味があって、いずれはそういう領域に踏み込めたらいいなあということで、読んでみた。

基本は大切だが、教科書的なことをそのままやることは工夫が無く、個々の状況に合わないことが常だと高所では特に気づいた。 登山では経験が何よりも大切な糧となることがよくあるが、今回御食料計画も多くの試行錯誤の上に敷かれたものではなかったので工夫が足りなかったと反省した。

冬山は荷物かかさばる。行動食なども無駄に持ち込めないし。

ここ最近は豊富な書籍やネット情報で参考になるけれど、自分の体に合うものはやはり、経験や工夫が求められる。

そして食料補給でいかに消耗した体力を回復させ、制限された水分で体の血の巡りをよく循環させるかが、高所アルパインクライミングでの体調を左右するとこの遠征で痛感した。たかが食事だろうが、されど食事だと思うのである。

”水分”は登山全般においても重要だね。

食って、寝て、登る。この3つの要素の一つ(食う)をとっても、失敗を元に経験で進化させることでさらなる高みを目指す重要性が秘められている。

大変参考になる内容なので、興味ある方はぜひ。

「ピオレドール賞を審査するということ」

Patagonia アンバサダーである"ジャンボ"のこと、横山勝丘氏の記事。

横山氏の紹介記事はPatagonia公式サイトが詳しいのでご覧いただければ。

パタゴニア:アルパインクライミング・アンバサダー:横山 勝丘 「ジャンボ」

ピオレドール賞は「登山界のアカデミー賞」とも呼ばれている。

この賞を知ったのは、ICIスポーツ勤務、Team84のI氏がきっかけである。

その頃はそこまで登山そのものを深く考えていなかった。

この記事を読むまでは。

だいたい、あるクライミングに対して審査員一人が理解できることなんて、たかが知れている。写真と話だけで、果たして他人にそれが理解できるのだろうか?審査にはお世辞にも登山を理解しているとは思えないような人間もおり、彼らはもちろんのこと、クライマーであっても、そのクライミングの凄さを完ぺきに理解することは不可能である。

その意味を理解できるまでは時間がかかった。写真やラインを見ればそれなりにすごいと評価もできるし、初登ならなおさら評価もつく。

私が経験した赤岳主稜や錫杖岳3ルンゼ、残雪期の剱岳早月尾根、穂高縦走で感じたことは、その場にいた人しかわからない大変さがあると感じた。

ちょっとそういう経験の話を他人にした時、捉え方が分かれてくる。

オーガのアメリカ隊は、二人して大はしゃぎ。「ジャンボ、最高の選択をしてくれたなぁ~!」と抱きついてきた。一方で、ムスターグタワーのロシア隊の表情は浮かばない。彼らにしてみれば、このイベントで「一等賞を取る」ことがすなわち、ここに参加することの意義だったのである。

ピオレドール賞を受賞したい一心でクライミングに挑む登山家もいるし、ノミネートすれば、いろんな登山家の出会いが広がるからと力を入れる人もいるんだなと。

世界中から集まった意欲あふれる経験豊かなクライマーたちが一堂に会し、一緒にクライミングをし、酒を飲む。同じ時間と空気を共有できる。それは非常に貴重な体験でもあった。

そこまでの力量もないけれど、その場の雰囲気は味わってみたいと伝わる記事だった。

実際にその賞のシンボルである金のピッケルがICIスポーツ登山本店に飾ってあるので見てみるといいだろう。

ピオレドール・アジアという賞もあって、そのピッケルも北アルプスの岳沢小屋で拝見した。

なぜそこにあるかは実際に行ってみればわかるだろう。