フリーソロの心境
アローン・オン・ザ・ウォールを読了。
ALONE ON THE WALL アローン・オン・ザ・ウォール 単独登攀者、アレックス・オノルドの軌跡
- 作者: アレックス・オノルド,ディヴィッド・ロバーツ,堀内瑛司
- 出版社/メーカー: 山と渓谷社
- 発売日: 2016/02/18
- メディア: 単行本
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アレックス・オノルドの自伝。
フリーソロで名を馳せていて、何故フリーソロに固執するか。
著者を深く知る機会になった出来事は、スポンサーであった、クリフバー社から解雇されたこと。
何故解雇されたのか気になっていたし、その時の心境を知りたかった。
フィッツロイのトラバースが有名で、その話はあやふやな感じで知っていたが、本書は章として、まとめられていて楽しく読ませていただいた。
ヨセミテトリプル
アレックス氏の数々の登攀の中に興味を持ったのはヨセミテトリプル。
- マウント・ワトキンスのサウス・フェース 5.10+ 19ピッチ 約609m
- エル・キャップのフリーライダー(サラテから派生するルート) 5.12d/13a 37ピッチ 約883m
- ハーフドームの北西壁レギュラールート 5.12 24ピッチ 約609m
すべて合わせると80ピッチ、登攀距離は約2100m。しかもワンディに近い。
記録もすごいが、どういう過程を経て達成したか、その出来事を読むとやっぱりわくわくする。
次元が違いすぎるけれど、アレックスなりの冒険を楽しんでいるということが伝わる。
他に心に残ったことをいくつか。
ある面でぼくはまだ子どもで、世界のあらゆるものに好奇心を抱き、はるか遠くにある山への夢を追いかけている。だが一方で、父親でもある――それはつまり、もはや死は許されないということだ。
(トミー・コールドウェル)
ドーンウォールのフリー化に挑戦していた、トミーコールドウェル氏とケビンジョンソン氏。
全31ピッチのうち、途中の14、15、16ピッチは5.14dの核心があり、
「ぼくは二人を絶えず激励し、固定ロープをアッセンダーで登っていって話をしたり、軽食を差し入れたりした。」
という温かいエピソードも。仲間に対する愛情、クライミング愛が伝わってくる。
「ときおり、クライミングは自己満足にすぎないという批判を耳にする。新たなルートを拓いても、しょせん人類の発展に寄与するわけではない、という批判だ。だがぼくの考えでは、そこには一種のパラドックスがある。」
というように、アレックス氏なりのクライミング哲学がある。
「クライミングは自己満足だという批判と並んで、クライミングは何の役にも立たないという主張もある。しかし、岩の上で(あるいは氷や雪の上で)技術を磨くことは、ほかの点でも自分を高めることにつながる。クライミングで学んだことは人生のほかの面にも応用できるというのがぼくの信条だ。」
クライミングを通して得られた富を世に還元するために財団を設立し、環境保護に関する活動も行っている。
フリーソロを行う行為についてアレックス氏に対して憧れを抱く子どもたちに悪影響を与えるのではに対して、こう述べている。
「自らの"スポーツ"の限界を押し上げていくクライマーというものは、自分の中に強い思いを持っている。彼らを突き動かすのは、挑戦することそのものが持つ魅力であって、どこかのヒーローを真似したいなどという衝動ではありえない。」
この本を読むまで、フリーソロって別次元にあるように捉えていた。
この本と出会ってアレックス・オノルド氏を少しでも知ることができてよかったと思う。
人それぞれその人なりの冒険がある。
やっぱり日本語で読めると嬉しいし、得られる情報も目から鱗だらけ。
翻訳者である堀内瑛司氏に直接会って感謝したい。
関連URL
Regular Northwest Face - Half Dome - Yosemite Valley, California USA http://www.supertopo.com/rock-climbing/Yosemite-Valley-Half-Dome-Regular-Northwest-Face
South Face - Mt. Watkins - Yosemite Valley, California USA http://www.supertopo.com/rock-climbing/Yosemite-Valley-Mt-Watkins-South-Face
Freerider - El Capitan - Yosemite Valley, California USA http://www.supertopo.com/rock-climbing/Yosemite-Valley-El-Capitan-Freerider