後ろむいても何もないよ

攀じる意味を追求する日々

ろう者同士あるいは、聴者とろう者が組んで登攀する場合のシステムについて

タイトルの中にある「ろう者」は耳が聞こえない人、「聴者」は聞こえる人。

「ろう者」は耳が聞こえないので、その人へコールしても届かない。補聴器をしている人なら聞こえる場合があるけれど、100%ではない。

現時点の経験からどのようにしてきたのか、記録に残したい。

テンション

  • ビレイヤーが見える

頭を振る、ビレイヤーを見る等して、伝えてロープを張ってもらうケースが多い。

  • ビレイヤーが見えない

登る前に確認しあう。ロープの流れで判断する。

例)「フォールするかもしれないので、その時は張ったままにして。ロープが弛んできたら様子見てストロークして。」

聴者ビレイヤーならクライマーから「テンショーン」または頭の動きで伝えて張ってもらう。

ろう者ビレイヤーの場合は、見えなくなった時点でロープの流れでクリップかフォールかテンションか3つの判断が必要になる。

ロープの弛みを一定にしてその弛みがどのくらい張るかどうかでクリップかフォールかの判断になる。

加重かかかっていれば、フォール後のテンションという判断をしている。

ロワーダウン

  • ビレイヤーが見える

手で「降りるよ」と振る合図をして伝える。

  • ビレイヤーが見えない

クライマーが終了点にロープをクリップした後、プルージックをセットしてビレイ側のロープを引っ張りつつ降りる。

ビレイヤーが見える位置に着いたらテンションかけてもらい、プルージックを外して、ロワーダウンする。

その場合、クライマーが終了点できちんとロープセットしていることが絶対条件である。

ハングドック

  • ビレイヤーが見える

テンションかけてもらって、そのまま手で合図して伝える。

  • ビレイヤーが見えない

意思疎通が難しいため、ハングドックは行わない方がよい。

ロワーダウン時でビレイヤー側のロープを掴んでハングドックを行うケースが安心。その手順を踏む場合は事前にビレイヤーに確認しておく。

登るよ

ハングドック状態から登るケース。

その場合は、ビレイヤーがずっと上を向いている状態から首を休めるため、下を向いていることが多い。

ろう者同士の場合、ロープを軽くたたいてビレイヤーに伝えて手で登るよという合図を送る。

もしくは、このまま登ってロープを弛ませてビレイヤーに気づかせるケースもある。

テンション状態から登るケースも応用できる。

2番手のロワーダウン

マルチなどで終了点からロワーダウンする時のケース。

1番手がロワーダウンが完了したかどうか合図を貰う方法は、ロワーダウン後、ロープを引っ張って伝達する。

ロープが引っ張られていることを確認してATCセットし、ロワーダウンする。

ビレイ解除

  • ビレイヤーが見える

手で合図して伝える。

親指を立てて「グッド」というサインを送る等、前もって決める。

  • ビレイヤーが見えない

見えない状態の手順だと、下記の手順で行う。

  1. クライマーが終了点へセルフビレイをする
  2. クライマーがロープを回収する(ビレイヤーはATCセットしている状態)
  3. ビレイヤーが10秒以上等間隔でロープが引っ張られていることを確認してビレイ解除を行う
  4. クライマーがロープを回収しつつ、ロープの流れからビレイ解除されていることを確認する

リスク

お互いの姿が見えない状態での「ビレイ解除」、「ロワーダウン」は、想定外の出来事を伝達できないリスクがある。

「ワイドクラックに落ちた?」

「崖の向こうに落ちちゃったのでは?」

「ロープがスタックしてる?」

というような場面に遭遇することが考えられるので、登攀前にトポ情報やルート観察等でリスクを排除していく心掛けが必要になる。

または登攀時、厳しいと感じた場合はトライを中止する等も検討する。

リスクを減らす工夫次第で、お互いに登攀する喜びを分かち合えたらと思っている。

※ 上記の内容はあくまで自己責任でお願いします。

また、意見や改善案などあれば、コメントやメールをお待ちしています。